こんにちは。ばば耳鼻科・日帰り手術クリニックの院長、馬場奨です。
今回は当院でもご相談をいただくことがある、鼻の手術後に起こる「エンプティノーズ症候群」(Empty Nose Syndrome, ENS)について解説できればと思います。
エンプティノーズ症候群(ENS)は、鼻の手術、特に下鼻甲介(かびこうかい)の手術を受けた後に、下鼻甲介が過剰に小さくなった際に起こることがある、まれな病気です。これは、鼻の中の組織が大きく減ってしまった状態のことを指します。
エンプティノーズ症候群はどんな症状がでるか?
ENSの患者さんは、「鼻が詰まっている感じがする」という不思議な感覚を持ちます。でも実際には、鼻の空間は広くなっているのです。
具体的には、こんな症状が出ることがあります。
- 鼻の乾燥感
- 目鼻内に空気が流れているのを感じない
- 息苦しさや呼吸のしづらさ
- 鼻内が開きすぎている感覚
- 鼻内のごみ(鼻垢)が多く溜まる感覚
- 鼻内が焼ける、顔が痛む感覚
心や生活への影響
ENSは、生活の質(QOL)を大きく下げることがあります。よく眠れなくなる、集中力が落ちる、不安を感じやすくなる、など精神的な影響を受ける人もいます。
治療方法は?
現在、ENSの治療は保湿スプレーや薬などの保存的治療が中心です。最近の研究では、手術で鼻の中の形を整えることで、長期的に症状が改善する可能性があることがわかってきました。
まとめ
ENSは、鼻の手術後に起こることがある病気で、「鼻が詰まっている感じがする」のが特徴です。鼻が広くなっているのに、息がしづらくなるという逆説的な症状が現れます。さらに、生活やメンタルヘルスにも影響を与えることがあるため、適切な治療が必要です。最近では、手術による治療法も研究されており、今後、症状を和らげる方法が見つかる可能性があります。
医療提供者である私達は、ENSを起こさないような手術治療を追求していくことが最も大切でしょう。
文責
ばば耳鼻科・日帰り手術クリニック 院長 馬場奨
・医学博士
- ・日本耳鼻咽喉科学会 専門医
- ・日本アレルギー学会 専門医
- ・厚生労働省 補聴器適合判定医
- ・難病指定医
2020年9月にばば耳鼻科クリニックを開院。耳や鼻の日帰り手術の診療に力を入れ、可能な限りの完治をめざした治療に取り組んでいる。2024年10月には医院名を「ばば耳鼻科・日帰り手術クリニック」と改め、耳と鼻の日帰り手術に注力。また、常に患者の立場になり、各所にモニターを設置して「医療の見える化」を行っているほか、利便性の向上や診療の質を高めることにも注力している。