こんにちは。ばば耳鼻科・日帰り手術クリニックの院長 馬場奨です。
当院にも耳硬化症の患者様がよく来院されますが、その中で、「耳硬化症って自然に治ることはありますか?」「手術すれば本当に聞こえるようになりますか?」といったご質問をいただくことがあります。この記事では、耳硬化症の治療法とその効果、そして自然治癒の可能性について、分かりやすくご説明いたします。
耳硬化症とは進行性の病気です
耳硬化症は、音の振動を内耳に伝える小さな骨「アブミ骨」が硬化し、動きが制限されることで音がうまく伝わらなくなる病気です。通常、加齢とともにゆっくり進行する伝音難聴の一種です。
残念ながら、この病気は自然に改善することはありません。現在の医学的知見では、薬物療法でも根本的な治療効果は期待できないとされています。そのため、放置すると聴力は徐々に低下し、日常生活に支障をきたすようになります。
治療の第一選択は「アブミ骨手術」
耳硬化症の標準的な治療法は「アブミ骨手術(アブミ骨手術/アブミ骨置換術)」です。これは、硬くなったアブミ骨の一部を人工の骨に置き換え、音の振動を再び内耳に伝えるようにする手術です。
適切な症例であれば多くの患者さんにおいて明らかな聴力改善が期待できます。
難聴が高度な場合は人工内耳の検討も
両側の耳硬化症が高度に進行し、内耳の感音機能そのものが障害された「蝸牛硬化症」まで進んでしまうと、アブミ骨手術だけでは十分な聴力改善が得られないことがあります。こうした場合には、「人工内耳」の導入を検討することもあります。
人工内耳とは、聴神経を電気的に刺激して音を伝える装置で、重度の感音難聴にも対応できる画期的な技術です。ただし、語音の明瞭度が保たれており、伝音難聴の割合が大きい場合は、まずアブミ骨手術を選択するのが一般的です。
補聴器という選択肢も
すべての患者さんが手術に適しているわけではありません。高齢や全身状態、個人の希望により、補聴器を用いた聴力の補助が適しているケースもあります。特に手術によるリスクを避けたい方や、軽度~中等度の難聴の場合は補聴器の装用で日常生活が快適になることもあります。
早期診断と治療が重要です
耳硬化症は進行性の病気であり、放置することで聴力が戻らないレベルに達してしまうこともあります。ですので、「最近聞こえづらい」「家族に何度も聞き返してしまう」といった初期のサインを感じた時点で、耳鼻科専門医の診察を受けることが大切です。
また、アブミ骨手術は確かに高い成功率を誇りますが、術後には稀にめまいや味覚障害などの合併症が起こることもあります。治療のタイミングや選択肢は、聴力の状態や生活スタイル、全身の健康状態に応じて慎重に判断されるべきです。
まとめ
耳硬化症は、自然に治る病気ではありません。しかし、現代の医療では高い成功率を持つアブミ骨手術によって、聴力の改善が十分に期待できます。進行を防ぎ、より良い聴こえを取り戻すためには、早期の診断と適切な治療が大切です。
また、耳硬化症の詳しい情報・手術については、こちらのページも参考にしてください。
https://www.baba8733.com/otosclerosis/
気になる症状がある方は、ぜひ耳鼻科専門医へご相談ください。
文責
ばば耳鼻科・日帰り手術クリニック 院長 馬場奨
・医学博士
- ・日本耳鼻咽喉科学会 専門医
- ・日本アレルギー学会 専門医
- ・厚生労働省 補聴器適合判定医
- ・難病指定医
2020年9月にばば耳鼻科クリニックを開院。耳や鼻の日帰り手術の診療に力を入れ、可能な限りの完治をめざした治療に取り組んでいる。2024年10月には医院名を「ばば耳鼻科・日帰り手術クリニック」と改め、耳と鼻の日帰り手術に注力。また、常に患者の立場になり、各所にモニターを設置して「医療の見える化」を行っているほか、利便性の向上や診療の質を高めることにも注力している。