コラム

2025.01.30

HIKAKIN(ヒカキン)さんが手術を受けた指定難病の好酸球性副鼻腔炎について耳鼻科医が解説してみます

ばば耳鼻科・日帰り手術クリニック 院長の馬場奨です。

今回はタイトルの通り、YouTuberのHIKAKIN(ヒカキン)さんが手術治療を受けていたと動画で公表されました「好酸球性副鼻腔炎」について、当院でも手術治療を扱っておりますので解説してみたいと思います。

好酸球性副鼻腔炎とは?

好酸球性副鼻腔炎とは、名前が同じ「副鼻腔炎」ではありますが、通常の慢性副鼻腔炎(いわゆる、ちくのう症)とは異なる疾患です。

好酸球性副鼻腔炎は、鼻の奥にある副鼻腔に好酸球という白血球が異常に増殖し、慢性的な炎症を引き起こす疾患です。通常の慢性副鼻腔炎では細菌感染が主な原因ですが、好酸球性副鼻腔炎は患者様のアレルギーや免疫の異常による影響が大きく、特に成人の喘息患者に多く見られます。

この病気は、両側の鼻に多数の鼻茸(ポリープ)が発生し、鼻づまりや嗅覚障害、鼻水などの症状を引き起こすことが多いです。特に嗅覚障害は進行すると回復が困難になることもあり、早期の治療が重要です。

通常の副鼻腔炎と比較すると、以下のような違いがあります。

好酸球性副鼻腔炎 通常の慢性副鼻腔炎
発症年齢 主に成人以降 いずれの年代でも発症しうる
主となる症状 嗅覚障害 鼻づまり、鼻水、頭痛など
炎症部 鼻の根元、目元の奥 頬の奥
鼻ポリープ 両鼻に多発する 片側の鼻または両側の鼻に単発する
合併症 気管支喘息、アスピリン喘息、薬物アレルギー 気管支炎

 

好酸球性副鼻腔炎の原因について

はっきりとは解明されていませんが、喘息やアスピリン不耐症、アレルギー性鼻炎などとの関連が深いとされています。環境要因や遺伝的要因が複雑に関与している可能性があり、鼻の粘膜に持続的な炎症を引き起こすことで、症状が慢性化しやすくなります。また、風邪やアレルギーの悪化が症状を増悪させることがあり、注意が必要です。

好酸球性副鼻腔炎の診断について

まずは診察にて問診と一般的な検査を実施します。
病歴の問診や、内視鏡検査(ファイバースコピー)での副鼻腔・ポリープの状態の観察、CT検査を実施して、症状を確認します。

その上で好酸球性副鼻腔炎が疑われる場合は、詳細な検査を実施します。
血液検査を実施し白血球の一種である好酸球の値が高いかどうかを確認したり、
ポリープを一部切除し生検を実施し、好酸球の値を調べることで、確定診断が可能となります。

また、好酸球性副鼻腔炎は厚生労働省の難病指定を受けています。確定診断を受けた方は、指定の診断書などを保健所に提出・申請することで、受給者証が交付され、医療費の助成が受けられます。

好酸球性副鼻腔炎の治療について

好酸球性副鼻腔炎の治療の流れとしては、まずステロイド薬を含む薬物療法を行い、炎症のコントロールを目指します。内服薬や点鼻薬、ネブライザー治療などが用いられ、症状の緩和を図ります。

しかし、薬物療法だけでは十分な効果が得られず、ポリープが多発する場合、手術による治療が検討されます。内視鏡を用いた鼻副鼻腔手術が一般的ですが、再発率が高いため、手術後の継続的な管理が必要です。

また、最近では、生物学的製剤による治療も登場し、より効果的なアレルギーのコントロールが期待されています。
(記事執筆時点では、デュピクセントやヌーカラ、といった生物学的製剤による自己注射が保険適用のお薬としてございます。)

手術後も定期的な診察を受け、適切な治療を続けることが重要です。

その他、当院で実施している好酸球性副鼻腔炎の日帰り手術について、指定難病指定を受けた際の手術費用など、詳細はこちらからご覧ください。
https://www.baba8733.com/ecrs/

 

文責

ばば耳鼻科・日帰り手術クリニック 院長 馬場奨

  • ・医学博士
  • ・日本耳鼻咽喉科学会 専門医
  • ・日本アレルギー学会 専門医
  • ・厚生労働省 補聴器適合判定医
  • ・難病指定医

2020年9月にばば耳鼻科クリニックを開院。耳や鼻の日帰り手術の診療に力を入れ、可能な限りの完治をめざした治療に取り組んでいる。2024年10月には医院名を「ばば耳鼻科・日帰り手術クリニック」と改め、耳と鼻の日帰り手術に注力。また、常に患者の立場になり、各所にモニターを設置して「医療の見える化」を行っているほか、利便性の向上や診療の質を高めることにも注力している。

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